安全を創る ⑩続・総合力
救助隊の現実にも触れざるをえない。「⑥救出」に関して
当初警察は、いち早く指揮権を救助隊に委ねた。
ヘリの要請に対しての対応に見られたように
事故対応に慣れていないから、当然と言えば当然。
その救助隊は「岳沢越え」と言われる前山を越えて救助すると主張。
我々はヘリが出ずともそれだけは無理だと方針変更を懇願した。
もし救助隊の方針が貫徹されていたら、少なくともあと3日は余分に
掛かっただろう。何せ搬送できたのは僅か300メートル。
搬送方法も一人で(背負子で)僕を担いでいた。潰れる訳だ。
背負った瞬間に「イタタ・・・」と戦線離脱する人もいて、心が痛んだ。
結局僕の周りには誰もいなくなってしまい、ヘリを呼んだのだから。
救助される側がそんなことを言えた義理ではないが
救助隊の実力も様々。にわか集めの隊にはあまり求められない。
でも残念ながら、そうした「救助隊」が各地にあるのが現状だ。
その救助隊から3日間の人件費だけで約500万の請求がされた。
幸いメンバー4人とも遭難状態だったからその保険で賄えたが
もし認めてもらえなかったら、と思うとゾッとする。
あってはいけない事故。しかし何が起こるか分からないのが山。
登山者の側が総合力向上に最大限の努力をしなくてはならないし
救助する側にもそれは問われることだろうと思う。
今日、たまに救助隊からレスキュー講習を依頼される。
とても大切なことで嬉しい限りだ。そんなふうにして、全国で
救助隊の総合力が向上することを願っている。