スタンディングアックスビレイ②
先日書いた雪上技術の一つ、スタンディングアックスビレイ、
それを提唱し、普及された松永敏郎さんは去年お亡くなりになった。
指導常任委員会に参加すると、にこやかな氏がいたのを思い出す。
松永さんと初めて出会ったのは文登研。(文部省登山研究所)
丸山東壁の下部で、杖を手に目を細めて風を見ているような
背筋の通った氏に、若かった僕は威厳を感じるばかりだった。
深い、深いものを感じ、「そんな存在感を自分は持てるのか」と
技術だとかそんなものを抜きに、圧倒されるものがあった。
松永さんの書かれたS47年「岩雪」に載ったSABについての論文も、
そのまま現代に通用するものだった。
本質は制動確保であること、体勢の間違い、
衝撃荷重の鉛直成分を活用することを含めて
僕がこれまで一番影響を受けたと技術だと言っても過言ではない。
それを今日的にアレンジしたのが2009年から日山協が提唱している
先日図解で表したもの。
そこには日山協遭対委員会の「プラトー」という概念や
雪上支点の「理想的」な角度も取り入れた。
しかし本質は制動確保であること、その普遍的なものは
今でも変わらぬばかりか、より輝いているようだ。
氏の、確か秋風に揺れるあご髭や凛とした姿。
僕は少なくとも松永さんの理論を正しく語り継ぎ
発展させる一人でありたい。
この日月は鳥取・大山で日山協氷雪技術研修会が開催される。