スタンディングアックスビレイ③
この間の日山協・氷雪研修会におけるSABは
ピック・ブレードに足を沿え、挟みこむ体勢を永く用いてきた。
谷足でスリングを踏む、つまりディレクショナルアンカーが
体より谷側にある形だ。
初心者が直立不動の恐怖心から体を山側に倒す場合、
ほとんど山足を山側に移動すると考えられる。
その場合、衝撃が掛かった谷足はディレクショナルアンカーそのものを
谷側へ押す事になり、それはピッケルを谷側に倒す事に繋がる。
それがプラトーそのものを崩壊させ、
失敗に繋がる事例が意外と多いのが気になっていた。
両足を揃えた直立不動の体勢で体の横に衝撃荷重が掛かる時、
体を傾けたくなるのも心理的に頷ける。
衝撃に引かれる方向を極力体の重心線、つまり鉛直方向にしたい。
そのためには山足でスリングを踏む以外ない。
そして足は肩幅くらいに開く、いわゆる自然体が最も安定感がある。
そんなSABが理想ではないだろうか、そんなふうに考えていた。
その、不安定の要素を減らすという発想が、僕の
そして日山協の推奨する今日的なSABに繋がっている。
だから慣れている上級者にとって、それはどうでもいい
「部分的」なものでしかないかもしれない。
どんな体勢でも制動確保が上手ければ確保は成功するからだ。
即ち、制動確保がその技術の核心ということになる。
練習を繰り返すこと、制動を身体で覚えること、それがキーとなる。