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2013年12月25日

「身代金」②

僕より8歳下の奥田英朗は岐阜県生まれ。東京オリンピックの頃、
彼はまだ5歳だったはず。そんな彼が差別、貧困というものに切り
込んだのは何だったのだろう。そこまで考えさせるのだから、さすが
吉川英治文学賞受賞作品。

あれから50年。再び東京オリンピック招致に成功した猪瀬知事が
徳州会問題にこらえ切れなくなって辞任。金がものを言う社会は何ら
変わっていない。島崎の故郷、秋田は貧しかった。小説の中の話だが
土産に持って行ったサンドイッチのマヨネーズの味を生まれて初めて
味わった家族が目を輝かせたというくだりがあった。僕があの頃感激
したハンバーグと同じだ。今の東北は、はたしてどうなのだろう。さすが
にそこまでのものはないだろうが、原発は当時にはなかった放射能
汚染を生み出し、未だに仮設住宅に住んでいる人が大勢いる。

未だそんな現実があることに、僕は当時と何ら変わっていない東北を
思う。田舎の犠牲の上に立った繁栄というものがある。まるで、今
第二の島崎が出てきておかしくない現実がある。

子供だったから無理もないが、あの頃未来の予感しか感じなかった。
しかしその未来は、田舎をまるで人柱にしたような首都の「繁栄」の
中に見えたものだった。人々は熱狂した。敗戦からの復興というもの
が煙幕にもなっていたからなお更だったが、今はそれがなくても東北
の「犠牲」を思い至らない時代。現実はこうも見えにくいものか。

福島に仮設庁舎の国会や首相官邸でも作って政治をやったらどうか、
そんな政府だったら少しは日本も変わってくるかもしれない。
「オリンピックの身代金」は今なお生きて迫ってくる。

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:35│Comments(2)
この記事へのコメント
 う~ん、久しぶり。本領発揮の骨太日記。
まだ飲んでないですな。

 東京と東北。繁栄と貧困。
小説を読んでみたくなりました。
Posted by 松 at 2013年12月25日 21:46
是非!島崎に惚れちゃうよっ(笑)
Posted by ラテルネ瀧根ラテルネ瀧根 at 2013年12月26日 06:53
 
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