ラテルネ瀧根の登山塾

プロは「万が一」を自分だけで完結しなければならない。そんなプロ
が故の孤独感を感じている人も多いのではないだろうか。

だから３スラをやるなら単独が当然のことだと思っていた。それが
「怪人」の登場だ。これも出会った運命なのかもしれない。彼はクラ
イミングから遠ざかって久しいから、一緒に登るとしたら引っ張り上
げるしかない。彼を巻き添えにはできないから僕が登る時は彼の
ハーネスからロープを外し、彼が登るときだけロープを結ばせてそ
れを確保するというやり方で、単独へのこだわりと折り合いをつけ
ようと考えた。

それなら最悪の場合、彼は僕の墜落に引きずり込まれることなく、
下のパーティに何とかしてもらうことができる。

そんな戦術で良ければ一緒に行ってもいいか、と思うようになった
のは去年の秋頃だったろうか。そしてこの前の新年会でそれを伝
えた。Kさんは黙って聞いていた。

S君の足の調子、彼らパーティの都合、そして彼らと我々の日程を
調整さえできればそんなプランが実現できる可能性も出てきた。

夢は頑張れば叶うものではない。叶わないものだっていくらでもあ
る。そうでなければ世の中、オリンピックの選手だらけになってしま
う。それでも夢を持って頑張ることからしか始まらない。

かつてKさんの写真が一枚１０００万で売れたという。Tさんは３年
前、夢だった剣沢大滝を完登した。僕もささやかな夢に向かう。た
だそれだけのことなのだが、類は友を呼ぶということか、そんな悪
ガキ３人が集まると不思議と面白い。