ラテルネ瀧根の登山塾

昨日は突然思いついて女房と２人、位山から川上岳（かおれ岳）を往
復してきた。「天空の遊歩道」として有名なそのルートだが、行くのは
初めて。残念ながら霞が掛かっていて、展望はイマイチだった。

午後の天気が心配されたが、川上岳から戻るに従って晴れ間が覗く
ようになった。汗をかきながら山岳会の話をしたのだが、その最後に
出たのがＹという男。

そのＹがその頃、最後の戦いを強いられ力尽きたことを知る由もな
かった。「たまには王将の餃子が食べたい」と買って帰り、冷たいビー
ルを飲み終わった頃、会の理事長から電話が掛かってきた。

「Ｙが事故で亡くなったらしい。詳細が分かったらまた連絡します」
にわかに信じがたく、体が熱くなった。あのＹが・・・逝った。

Ｙとは個人的にもよく飲んだ。どんな時も、まるで僕を天敵のようにし
て沈没させようと隣に注ぎに来た。大概は返り討ちになり、自分が沈
没していたのが可愛くもあった。

「あのバカ野郎に車間距離をもっと取るようきっちり言うべきだった」
なんて悔やんだりしていたが、事故が自転車によるものだと連絡が
入った。土曜に会社の飲み会があり、その帰りの自損事故とのこと。

会社人間で土日も出社したりしていた。だからなかなか山にも行けな
かった。それでも強く、いつもザックにはビールとフライパン、そして
とんちゃんが入っていた。誰もがそれを知っている。

数人からメールが入ったり、電話が入った。寝られない。体が熱い。

少しは彼の思いに僕があって、天空の遊歩道でインスピレーションが
湧いたのかもしれない。５２歳の無情の運命。安らかに。