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2014年12月07日

御嶽、生還の記録②

(中略)八丁ダルミを経て剣ヶ峰には11時30分に着いた。
焼岳の長老に聞いたことがあるが、噴火前は地熱が上がり登山道が
蛇だらけになると。蛇は一匹もいなかった。落石などもなかった。登
山者が感じる前兆は特になかったと思う。

頂上には100人位はいただろう。楽しそうな笑い声、記念写真、雲の
切れ間から見えだした八ヶ岳、南・中央アルプスに湧く歓声。おにぎり
をほうばる人、お湯を沸かす人、靴を脱ぎ寝そべりくつろぐ人。それぞ
れが晴天の頂上を満喫していた。

11時42分、剣ヶ峰から社務所脇を通り抜け時計回りでお鉢廻りに
歩き出した。剣ヶ峰から350メートルほど来た所だったと思う。単独
の男性に道を譲り平になった所で、背後から「ドドーン」と鈍い音がし
た。振り返り、見上げる程高く上がった噴煙と噴石を見て、すぐ噴火
だと思った。放り出された石が降ってくる。頭を守らなければ。1秒の
ロスも許されない中、救助隊で身につけた「今出来る事」「できない
事」「やらなければいけない事」「やらなくていい事」そして何より「死な
ない事」が明確となり、生きるための思考回路に切り替わり、体が勝
手に動いた。考える暇などなかった。

登山道脇の岩に張り付き出来るだけ小さくなった。同時に視界を遮る
濃いガスと、鼻に付くキツイ臭いにまかれた。そのガスは硫化水素ら
しい。温泉地によくある「立ち入り禁止」の所で、もくもくと出ているあ
の濃いやつに。息が吸えない。どう見ても身体に悪そうなのでガスを
吸わないように我慢するが、苦しくてガスを吸ってしまう。息が出来な
い。喉を押さえてのたうち回る。(つづく)

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:36│Comments(0)
 
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