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2014年12月09日

御嶽、生還の記録④

大きな岩の下に不自然に空いた小さな穴を見つけ、頭を入れた。

153センチの私が、がんばっても頭と背中の半分しか入らない。左足
は無理やり折りたたんで入れ、両腕も何とかねじ込んだ。どうしても
腰と右足は入らなかった。背中にはザックがある。

すぐに2回目の噴火が起きた。あたりは真っ暗闇になり、自分の手す
ら見えない。私がこの穴をでる約50分位ほぼ真っ暗闇。たまにうっす
らと30メートル先が見えるくらいの状況だった。

生ぬるいガスが絶えず来ていた。噴石が絶望的な音を立てて雨のよ
うに飛んでくる。岩がぶつかり砕け、四方八方に飛び散る。隠れてい
ない右足に無数に当たる。「右足はもうダメかな」とあきらめた。2つ程
「痛てっ」というやつが当たった。

噴石と一緒に小さな石の粒がざんざんと降り出した。足に当たる感触
はあった。あっという間にしゃがんでいる腰まで積り、どことなく温かく
まるで砂風呂に入っている様だった。この先の展開が全く分からない
事、予想が出来ない事が何よりも恐怖だった。

私が思うに、大きな爆発は3回あった。3回目が一番大きな音で近く
に感じた。たまに見える視界を、頭を突っ込んだ穴から肩越しに見て
いた。噴石は大きくなり軽トラック程の岩も平気で飛んでいた。

この頃は上部の方では相変わらず岩の砕ける音はしていたが、灰が
積もったおかげで、新雪に岩が吸い込まれるような感じだった。腰も
右足も灰に埋まり岩が当たらなくなっていた。なんとも不気味な現実
感のない光景だった。(つづく)

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:13│Comments(0)
 
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