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2015年03月04日

「栄光の岩壁」

この前八ヶ岳でスノーボラードを作ってその強度を測っていたときの
こと。「こんな難しいはずがない。明らかにルートが違う」・・・グランド
ジョラスで山岳同志会の仲間が悪戦苦闘し、どうしても抜けられない
と敗退を決めた退却のワンピッチ目、もっとザラメのような不安定な
雪でボラードを作って懸垂したことを思い出した。

知っていただけの実践初体験。「あ、実践ってこんなものなんだ」と
僕は騙しだましの緊張感に包まれていた。

その時、僕だけは無人のレショ小屋に一泊。相棒は背中を丸めて氷
河を下って行った。「今度こそマッターホルンだね」それが慰めに過ぎ
ないことを、きっと二人とも分かっていたのだと思う。

僕は翌朝登ってきたフランス人のカップルに、持っていた餅を焼いて
「ジャパニーズライスケーキ」とか何とか言って食べさせたが、美味そ
うには食べてくれなかったのを覚えている。

あの時、お互い1人で氷河を下りながら、何を考えていたのだろう。
僕の右足首は、まだ元気だったはずだ。

「栄光の岩壁」の最後は、岳彦がマッターホルンを落とした後、「栄光
の岩壁が眩しすぎてならない。長い年月、ひと筋に山に賭けてきた自
分自身が可哀想でならないのだ」と自分の足に眼をやるところで終わ
っている。マッターホルン北壁を落としてアイガー北壁へは行かない
という岳彦の想うものは何か。同じヨーロッパ3大北壁を狙ったものと
して僕の胸に突きつけられた。

その時腰掛けビヴァークするつもりで持っていったヒノキで作ったブ
ランコが見たくなり、昨日はそれを触ってみた。

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:46│Comments(0)
 
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