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2013年03月15日

先週の自分

登攀者は、その称賛も何もない世界に身を置く以前に
まず一ノ倉沢に辿りつかなければならない。
そのアプローチの林道でさえ、雪崩によって何人か死んでいる。
一週間前、その世界に身を置こうと僕は林道を歩いていた。

『神々の山嶺』(夢枕獏)の“鬼スラ”を前にした羽生の台詞
「おまえ、何のために生きてるんだ。山へ行くためじゃないのか。
山へ行かないのなら、死んだも同じだ。ここにいて、死んだように
生きてるくらいなら、山に行って雪崩で死んだ方がまし」が浮かんでくる。

滝沢第三スラブ、僕の必ず登ってみたいルートの一つだが
もちろん「死んだ方がましだ」なんてふうには思わない。

絶対成功させる。心臓の鼓動が聞こえる。
山頂で右手のピッケルを高々と突き出す自分を想像する。

当時それは、「識者」からみれば常識を越えた暴挙とさえみられる
神話とも言える森田勝の「三スラ」初登だった。

パートナーに「第二登、おめでとう」と言った森田は
良くも悪くも伝説の男になる。
そしてグランドジョラスで劇的な生還劇を繰り広げ
非業の死を迎える。以降、三スラで何人が命を落としただろう。

「滝沢スラブ登攀に必要なのは、技術より体力、状況判断力もだが、
不確実な読み切れない状態、ビレイが取れないかも知れない
漠然としたリスク、不安を感じる心に打ち勝つ意志と情熱だ」
廣川健太郎は言う。

先週の、生き生きしていた自分が嬉しかった。

〈一ノ倉出合、三スラは中心左〉
先週の自分

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:27│Comments(0)雑感
 
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