ラテルネ瀧根の登山塾

雪崩に備えて、少し下の二股の中間にある大岩のところを整地。
岩を背にした、フライシート一枚の三ツ星ホテルに収容された。

夕食は豪華フリーズドライの生姜焼肉丼を全員で一袋。
ディナーは一口で胃袋に収まった。

穴の開いてないビニール袋を探して俺の小便をとり、Ｎに渡すと
彼は二本指でつまんで、できるだけ遠くに投げ捨てた。
この様子を見て、「大きい方は我慢しなくちゃな」と密かに思った。

フライシートを叩く音がアラレだと分かるのにしばらくかかった。
最初は手ではたき落としていたが、そのうち寝たまま足でも蹴り始め、
その度に結露した水滴がもろに顔にかかる。

そのうち「冷たい」どころの騒ぎじゃなくなって、徐々に圧迫感が増す。
雪崩だ！フライシートと大岩の間に大量のアラレが入り込み、
最奥で横になっていた俺の全身がギブスで巻かれるような感じ。

かくして俺を除く３名は深夜の除雪のアルバイトに精を出すこととなる。
その内、繰り返しあっという間に埋まるものだから必死である。

痛い足は蹴りまくるわ、頭はコッフェル（除雪用）で叩きまくるわ、
それは大変だった。

その内限界を感じたのか二人で別天地を探し始めたようで、
頭をガリガリやるのは一人になった。それはいいのだが
今度は締め付けのほうが勝って呼吸空間も無くなってきた。SOS！
三人に引き出してもらい、暁の脱出劇は成功した。

フライは捨て、次のホテルは雪崩の流心から外れたテラス状の所だ。
空が白んできていて、皆黙ったまま膝を抱えてそれを見ている。