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2013年04月25日

K2 ③アタック

7月28日、2時出発。山田君が酸素を2本背負い、毎分3リットル
吸いながら先頭でラッセルしていく。
一次隊がFIXした固定ロープは、ほとんど雪に埋まっていた。

14ピッチ目でC4から出発したシェルパ達が追いついてきた。
トップを交代してもらうが、彼らも疲れたのであろう。歩みは遅い。
そしてようやく人類未踏の西壁を抜け切ると、風のない岩陰で
シェルパ達は休憩していた。ウイダーインゼリーをもらう。

僕が先行して穏やかになった頂上稜線を一歩一歩進む。
「山頂だ!」と思った所はニセピークで頂上稜線はまだ続いている。
「くっそー」と思いながら再び一歩一歩、無心で進んでいたら、
シェルパのペンパ・ドルジェに抜かれてしまった。

そして彼はピークの一歩手前で待ってくれている。
「俺がその役をやるつもりだったのに!」と、僕は酸素供給量以上の
ペースでそれに近づいた。そして、遠慮して後ろについていた
山田君との3人で肩を組んで8611mのピークを踏んだ。

僕は息も絶え絶えで、とても感激するような状態ではなかった。
少し落ち着き、登ってくる仲間と握手したり抱き合うとさすがに
こみ上げるものがあったが、どうやら涙は一次隊の登頂で出尽くしたようだ。

ただただ徳島さんを始め8人の仲間、そして支えてくれた全ての人への
感謝の気持ちでいっぱいの8611mだった。

僕にとって初めての8000m峰、周りを遮るものは何もなく
紺碧の空の下、徳島さんの遺骨が埋められた目印のスノーバーが
1本、嬉しそうに輝いていた。

〈遮るものはもう何もない〉
K2 ③アタック
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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:00│Comments(0)ヒマラヤ
 
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