ラテルネ瀧根の登山塾

翌日、早めに空港に到着してうろうろしていたら、ヒンズー教徒の集団が
「出口」となっている所から入ってヘリに乗りこんでいる。
そこで我がリエゾン、「我々もここから」と銃を構えた兵士に掛け合ったが
全く話しにならない。政府の役人として面子をつぶされた様子で
相当怒っている。「空港の責任者に文句を言ってくる」そう言い残して
ヘリを離れたのは出発予定時間の１０分前。
騒ぎ出したのがロシア人パイロット達。３０分後に戻ってきたギリ氏に
殴りかからんばかりだ。そして離陸の遅れの責任はリエゾンにある、
といった文書を作り、リーダーである私のサインを求めてきた。

リエゾンは書くなと言い文書を取り上げようとする。
パイロットにしてみればフライトの責任の所在を明確にしておく必要があり
逆にリエゾンにしてみれば、再フライトなんて事になれば
その費用を自分で持つ事にもなりかねない。

もめている間にも雲行きが怪しくなってきている。サインをし、離陸。
リエゾンは泣いていた。「なにか問題が起こったら、精一杯対処するから」
と肩をたたく。幸い何もなかったかのように天気も持ち、雪崩音の
鳴り響くＢＣに到着、仲間の大歓迎を受けた。

２日前に到着した彼らはずっと雨にたたられており、その日初めて射す
お陽様に濡れたシュラフを干していた。ケロシンも底をつく状況だった。
「本当にご苦労様。」拝むような気持ちである。

ヘリはキャラバン中に転んで唇を大きく切ったコックを治療のために乗せ、
あと１人、誰よりもホッとして仕事をする気が無くなったリエゾンも乗せて
カトマンズに戻って行った。

〈ＢＣに着いた大型ヘリ、向こうにはアイスフォールが見える〉