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2013年05月22日

アンナプルナ 登頂断念

もともとC2が崩壊したとき、泣きながら必死に祈っていたシェルパ。
6時の定時交信で「地獄から交信しております」と言ったのを覚えている。
そして命令指揮系統の崩壊。そんな時こそ日本人メンバーの頑張りが
問われるのだが、身体がろくに動かないのだ。

おまけに激しいストレス下において理性を保つのは大変な事。
力のないこの隊、遠征はその時点で終わっていたのかもしれない。
しかし僕は、例えそうであるにせよ1mでも高みを目指したかった。

C1にいたシェルパを全員呼び、全体協議をする。
サーダーは、①C4から上、ロープが無い。②調子が悪い。
③メンバーは何もやらない。④元気なのは瀧根だけであとは登りも下りも
遅く、デンジャラスだ。 そしてシェルパは誰もアタックしないと言う。
少し間をおいて「もう終わりだな。」隊長が力無くそうつぶやいた。

丁寧な組織運営、チームワークづくりが僕の信条だったから
遠征の終了よりチームワークの「瓦壊」がショックだった。

終わった今、隊員たちはせめてC3に触りたいと望んだ。
アンナの怖さを知ればこそ、これは却下すべきだったかもしれない。

でも「終わりの予感」を持ちながらも必死に登りたいと思った気持ちは、
メンバー誰もがそうだろう。隊長と僕は皆を見送った。なればこそ、
例え彼らを雪崩で失ってもそれを受け入れなくてはならない。

「豊穣の女神」アンナプルナは、そんな最後のわがままを許してくれた。
皆、C3に触るどころか半分も登れず帰って来たのだった。
ホッとしながらも、高所衰退していくばかりの彼らを改めて知った。

8000m峰は間違いなく人を選ぶ。

〈紺碧の空を目指す登行〉
アンナプルナ 登頂断念

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Posted by ラテルネ瀧根 at 06:05│Comments(0)ヒマラヤ
 
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